樹里の家族が住むマンション。
かつて俺も住んでいたマンション。
母さんとの思い出が沢山詰まったマンション。
「海陽……ありがとう……」
「いや……」
「あっ!これ、あげる」
樹里はそう言って、スーパーの袋を俺に渡してきた。
「えっ……でも……」
「いいから。晩ご飯作りに行って、追い返されたって言ったらカッコ悪いじゃん」
樹里がクスッと笑う。
「それに助かるでしょ?それで当分、買い物に行かなくて済むでしょ?」
「そうだな」
俺もクスッと笑った。
「じゃーね……」
「あ、うん……ありがとな」
「ううん。また明日ね」
「あぁ」
樹里はマンションのエントランスに入って行った。
それを見送って、俺は先生のマンションに向かった。



