「今さら……都合良すぎるよ……」
『紗英……』
「奥さんが妊娠したから別れてくれって言ったよね?あの時、何て言ったか覚えてる?"父親になるから、もうこんな遊びは出来ない"って……。"子供の父親は俺しかいない。アイツにも俺だけなんだ"って……。それなのに奥さんが流産したから寄りを戻したいなんて……都合良すぎるよ……最低だよ……」
『…………』
和彦は俯いたまま何も言わなかった。
「私ね凄く辛かったんだよ?和彦のこと本気で愛してたから……」
『…………だったら……』
和彦は顔を上げてそう言った。
「和彦?今日、カフェで見たでしょ?」
『えっ?』
「彼……。あの彼がね、私を救ってくれたの……。だから和彦とはもう……ゴメンね……」
私は和彦の言葉を聞く前にインターホンを切った。
これでいいんだ……。
これで……。
そう自分に何回も何回も言い聞かせた。



