職員室に戻ると、他の先生方は個々の仕事をしている。


中には帰った先生もいる。


私は椅子に座った。


"フゥ……"


と、息が漏れる。



「水島先生?」



声をかけてきたのは隣の席の山下先生。


30代前半の男の先生。


左手の薬指にキラリと光る結婚指輪。


机の上には、3歳くらいの子供の写真が飾ってあった。



「あ、はい……」


「歓迎会をする話があるんですが……水島先生はいつがいいですか?」



山下先生はパソコンのキーボードを打つ手を止めて、こちらに向いた。



「いつでも……」


「今日……は、急だから無理ですよねぇ?」


「今日……ですか?今日はちょっと……」



私は苦笑いしながらそう言った。



「もしかしてデートですか?」



山下先生がクスッと笑った。



「いえ……そういうわけじゃ……」


「そうですか……。じゃーまた歓迎会の日にちが決まったらお知らせしますね」


「はい」



山下先生は、またパソコンのキーボードを打ち始めた。


私は帰る用意をして、残ってる先生に挨拶をして職員室を出た。