玄関で靴を履き終えた、星野くんがこちらを向いた。
パーカーのポケットに手を入れて、ふたつ折りされたメモ帳を出した。
「俺から先生にプレゼント」
そう言って、メモ帳を笑顔で差し出す星野くん。
「…………えっ?」
プレゼント?
私は目線を星野くんからメモ帳に移した。
「うん。先生?受け取って?」
「…………うん……ありがとう……」
私は星野くんの手からメモ帳を受け取る。
「じゃー、また学校でね」
「あ、うん。気をつけてね」
星野くんは玄関を開け、笑顔で手を振った。
"バタン――"
玄関が閉まる。
私は手に持っていたメモ帳をゆっくり開いた。
………………えっ……うそ…………。
そこには……。
【090-****-****
h-kanata0720@*****.ne.jp
寂しくなったら
いつでも連絡して下さい。】
と、書いてあった。
メモ帳に書かれた文字が歪んでいく……。
メモ帳の上にポタッと一粒の涙が落ちた。



