「先生?帰るね」



ピアノを弾き終えた星野くんは椅子から立ち上がりそう言った。



「…………えっ?もう、帰っちゃうの?」



星野くんに対して、そう言ってしまったことに、自分でも驚いてしまった。


だや……私……。


何てこと言っちゃったんだろう……。



「そんなに俺にいて欲しい?」



星野くんはクスッと笑う。



「えっ……いや……その……」



寂しいだけ……。


ただ、寂しくて、今は1人になりたいだけ。


星野くんは、ただの生徒。



「なーんだ。残念。あっ!先生?何か書くものある?」


「えっ?書くもの?」



私はソファーから立ち上がり、AVラックの引き出しからメモ帳とボールペンを出した。



「これでいい?」


「うん。ありがとう」



そう言って、笑顔でメモ帳とボールペンを受け取った星野くん。


メモ帳を開いて、ボールペンで何か書きはじめた。