「悲しそうな顔をしてる母さんによく"あの人のこと愛してる?"って聞いてた。
そしたら必ず笑いながら"当たり前でしょ?"って、返事が返ってきたんだ。
でも、やっぱり悲しそうな顔をするんだ……。
今から思えば、あの時から母さんは、父親が他の女性と関係を持ってたことをわかってたんじゃないかって思ったんだ。
この前、先生にも同じ質問したよね?
先生は母さんと同じ答えを言った。
だから俺は、彼氏に浮気でもされてるのか……それか、先生自身が妻子ある男性と付き合ってるのか……どっちかだと思ったんだ……」
やっぱり……。
星野くんはわかってたんだ……。
星野くんはソファーから立ち上がり、ピアノの方へゆっくり歩いて行く。
蓋の開いてるピアノの鍵盤を指でゆっくり押さえた。



