後ろにいた彼が私の横に立つ。
彼の手がピアノに伸びて、鍵盤を軽く押さえた。
"ポロン"
と、音が出るピアノ。
鍵盤に目をやる。
綺麗な手……。
白くて細く長い指。
「じゃー、俺、帰るね」
「あ、うん……。気をつけてね」
彼はピアノから離れて、音楽室のドアの方へ歩いて行く。
「先生!」
ドアの前に立った彼は、こちらに振り返った。
「ん?」
「俺、3Cの"ホシノ カナタ"ほしのは空の星に野原の野、かなたは海に太陽の陽。覚えといてね」
彼がニコッと微笑む。
「………うん」
「ちなみに年は17歳。7月20日で18歳。血液型はAB型。ついでに彼女はいなから。じゃーね」
彼……星野くんは笑顔で手を上げて音楽室を出て行った。
星野海陽……かぁ……。
綺麗な名前……。



