「…………海……外……」
私はポツリと呟いた。
「そう。祖父が出した条件は、父親が高校卒業後、海外に行って仕事をすることだったんだ……。
結婚はさせてやる。子供を産むことも許す。
でも、父親は海外で仕事をして、お金を貯めて親子3人で暮らしていけるようになるまで、一緒に暮らさせないって感じだったのかなぁ?
それか……反対し続けたら、駆け落ちされたり、勝手に籍を入れられたりするかもしれないと思って、日本でも仕事はあったのに、わざわざ海外で働くことを条件に出したってことは、やっぱり結婚には反対だったのか?
うーん……その辺のことはよくわかんないや」
星野くんはクスッと笑った。
「で、父親が高校を卒業した日に、2人は籍を入れたんだ。
母さんは"綾野真季"から"星野真季"になった。
仕事の時には旧姓を使ってたみたいだけど。
それからすぐに、父親はアメリカに旅立った。
仕事先は、祖父の知り合いがやってるレストラン。
父親は母さんに、向こうで頑張って、お金が貯まったら必ず迎えに行くから待っててくれって言って、そう言ってアメリカに旅立った……」



