弾き終わった時、後ろから拍手が聞こえた。
「上手いじゃん」
「まぁ……これでも音大卒業してますから……。それに一応、音楽教師だし……」
「そか。ゴメンゴメン」
そうクスクス笑う彼。
私、やっぱナメられてる?
「てか、キミもピアノ上手いね。習ってんの?」
私は椅子に座ったまま体ごと彼の方に向いた。
「いや、習ってないよ」
「えっ?習ってないの?」
私は目を見開いて彼を見た。
「独学?ってやつ?家にピアノがあってさぁ……。それを弾いてたら自然と弾けるようになっちゃったんだよなぁ……」
えぇ!?
そんなことでここまでピアノが弾けるようになるわけ?
小さい頃からピアノを習ってきて、音大に入学するために必死に頑張ってきた私は一体何なの?



