「ありがとう……」
真顔でそう言う私。
私は音楽室のドアを閉めて、ピアノに向かった。
そしてピアノの椅子に座って、鞄から取り出した楽譜を譜面台に乗せる。
すぐ後ろに彼がいる。
何故か緊張してる私。
彼の演奏を聴いたからだろう……。
手が鍵盤の上になかなか置けない。
「俺が見てると緊張する?」
「いや……そういうわけじゃ……」
音楽教師としてのプライドがある。
これから彼らに音楽を教えなきゃいけない立場の人間だ。
緊張してるとは言えない。
手が震えてるのがバレないように鍵盤に手を置いて、ピアノを弾き始めた。



