バッハのG線上のアリアが音楽室に響く。
まるでプロの演奏を聴いてるみたい。
楽譜も無しに淡々とピアノの弾く彼に圧倒されていた。
ピアノの音に混ざって、HLの終わりを告げるチャイムが鳴った。
彼のピアノを弾く手が止まる。
「もう、ホームルーム終わっちゃったよ」
再び、こちらを向くと彼はそう言ってクスッと笑った。
何も言えない私。
そんな私は教師失格?
彼にナメられてる?
「あっ!先生、ピアノ使うんだった?」
私はコクンと頷いた。
「ゴメンね。はい、どうぞ」
彼は椅子から立ち上がり、椅子の横に退けた。



