彼がこちらを向いた。 ニコッと微笑む彼。 「キミ……今は、ホームルームの時間だよねぇ?」 私はそう言って、床に落ちた鞄と鍵を拾い上げた。 「そうだね……。でも面倒だからサボっちゃった」 そう笑顔で言う彼。 サボったって……。 悪いことをしてる意識はないわけ? 「早く教室に戻りなさい」 「そんな硬いこと言わなくてもいいじゃん。水島先生?」 相変わらず笑顔の彼。 彼は再びピアノの方を向き、鍵盤に手を乗せるとピアノを弾き始めた。