……あら?
貴方も迷い込んで来たの?
然うよ、アナタ。
私を呆気に取られた様に見ているでしょう?
丸で蜘蛛の巣に囚われた、蝶々みたいね。爛々とした悪魔の罠に掛かって了って。ほら、彼が来るわ。尤も、貴女に其れだけの価値が有ればの話しだけれども。

此処は楽園。併し地獄。
なんて、陳腐な言葉だけどぴったりなのよね。
貴方にも見せてあげる。

嗚呼……貴方の狂っていく姿、目に浮かぶ。

オイデ オイデ オイデ
ココニ、オイデ。

とても甘美ね。其の歪んだ表情、ゾクゾクするわ。

此処は私の世界。
物語は今から始まる。
終焉に向けて運命の歯車が軋み乍ら(ながら)廻る。
マワル。くるくるくるくる……。

悲劇の舞台、幕は上がった。
私は死ぬ迄唄い、踊り続けるの。

愛しの御主人。ねぇ、殺してあげたい程貴方が憎いわ。

だけど一つ覚えておいて頂戴。

扉の鍵を握るのは
誰でもない、私よ。

多分、ね。


序章・完