嗚呼、何時から斬う(こう)成って仕舞ったのかしら。
思い出せないし、其れに就いて考える事すら烏滸がましいとさえ思えるわ。

此処では私はエヴァ。御主人様は全知全能の神。天空神よ、人間界の秩序を支配為るのならば私の行く可き道を標して下さい。御心の儘に。

――私のアダムは何処へ行ったの?
神様はアダムから私を創った。私達が近親の身で在る事すら。罪、其れも知らなかった透明無垢な心。世の中のモノ凡てを慈しんだ私。

でも私は蛇に唆されて、彼の実を食べた。忌まわしい、紅の果実。瑞々しく甘酸っぱい果肉は結果的に神様を裏切る種と成ったの。

刹那、私は唯の俗物に成り下がった。此の身も心も。ユダと呼ばれても文句等無いわ。背いた罰としての烙印を。遺屍と果てましょう。

こんな私を憎んでいられますわね。
併し(しかし)、楽園を追放されはしなかった。アダムが居なかった故。
私はアダムから創られた。でもアダムは居ない。存在自体、成り立たないのに。酷い矛盾ね。何て絵空事?
私でも訳が判らないわ。


私はコッペリア。
私はエヴァ。
私は背徳の堕天使。
今、征くわ。