コッペリアの仮面 -琺瑯質の目をもつ乙女-


「コッペリア。」

「……何でしょうか、ご主人様。」
鼓動が高鳴る。
「そろそろ寝ようか。今日は疲れているし、夜更かしは美容に悪い。肌が荒れて仕舞う。」

「……はい。」
此の人は何を考えているのだろう。毎度の事乍ら(ながら)良く分からない。
考え方が全く違うのだもの。

私は彼の後をゆっくりと、出来るだけ間を取って歩く。何時の間にかもう螺旋階段を昇り切っていた。脚取りが極端に重い。
此の儘、時間が止まれば良いのに。

「此処が、コッペリアの部屋。もう覚えたよね。」

彼が然う言ったのを聞いた途端、私は悟った。
――此れは抗えない事。一巻の終わりだわ……。

所が彼は私が考えていた事とは全く違う言葉を発したのだった。
「一応生活必需品は調えた筈だが未だ殺風景だ。要望は直ぐに叶えるよ。じゃあ、コッペリア、お休み。明日は七時迄には朝食を用意しておく事。良いかい。」

私は一回瞼を瞬いた。

「――お休みなさいっ。」
私は彼に然う言った後全速力で自分の部屋に飛び込んだ。彼の気が変わって仕舞っては困る。
ドア付近で耳を欹てた(そばだてる)。