コッペリアの仮面 -琺瑯質の目をもつ乙女-


コンコン。拳でドアを叩く。
ノックは二回。

彼が其れに応えてドアを開いた。

「コッペリア。此処は君の家だからノックはしないで良いんだよ。後、君が来るだろうと思って此処で待機していたれども、談話室は隣だ。」

彼は私を隣の部屋へと導いた。

「……ドライヤー、何処ですか。」
開口一番に私が問う。

彼はソファーにゆったりと座った。
「おいで。髪、乾かしてあげるから。」
彼が自分の膝を軽く叩いた。

「え……否、自分で出来ます。」
彼の眉が微かに上がり、少し不機嫌そうな表情を浮かべる。

「私の言う事が聞けないのかい?コッペリア。」

大変、怒らせたかも。私は少し焦りながら彼の元へと急いだ。
結果、ソファの端にちょこんと腰を下ろす私。行き成り大腿部にだなんて難易度が高過ぎる。
そんな私を見て彼は鼻で笑い、霑った私の髪を一房手に為る。

彼は私の髪をとても大事そうに扱う。真綿に包む様に優しく。
私の髪が傷まない様に冷風にしてゆっくりと髪を乾かして行く。豚毛の櫛が私の髪を滑る。

案外、心地良いのかも知れない。
私は眼を閉じて身を委ねる。