私は俯き加減で黙って彼に着いて行く。
其の間も胸中のモヤモヤを払拭出来ずに彼に如何切り出そうかと画策していた。
「此処だよ。ゆっくりとどうぞ。」
彼は然う言って去って行く。私に脇目も降らず、颯爽と。歩行の仕方迄完璧だった。
此処迄辿り着くのに幾分、時間が掛かった。
何て広い屋敷なのかしら。
私は扉を開けた。
真っ白で清潔そうなバスルーム。ふっ、とミルクのクリィミィな香りがする。
少し大き目の猫脚バスタブ。猫脚は金箔が貼られている。バスルームにも抜かりなく優美な装飾が施されている。
開放感に溢れてリラックスするのに調度良い具合だ。
「泡風呂……ね。」
きめの細かい泡が私を待っている。
爪先を湯舟に入れた。良い按配だ。暖かい御風呂に浸かると、苦痛が少し和らいだ。私はシャンプーに手を伸ばす。柔らかいローズの匂いが漂う。
嗚呼、此の匂い。
バスタイムは乙女には至福の瞬間。自分自身を磨き上げる。
私はしっかり堪能すると、タオルを体に巻き付け、洗面所へと出る。
編んで有る籠の中には真新しい服が置いて有った。私は其れを怪訝そうに掴み上げた。

