コッペリアの仮面 -琺瑯質の目をもつ乙女-


「コッペリア。」
彼が私に厳しい目を向ける。
逸らせられない。縁無しフレームの奥の瞳が強い光彩を放つ。

「ご……主人……さ……ま。」

私は喉の奥から声を絞り出しした。喉に鉛玉が詰まっている様に滑舌が悪い。
と同時に先呑んだワインが無かったかの如く咽が渇いている事に気付く。

「其れで良いんだよ。御風呂は如何、コッペリア。屹度(きっと)気分が爽快に成る。今日のバスソルトはミルクだよ。膚もシルクの様に滑らかに輝きを放つ。」

彼の突然の提案に驚く。そんな場合じゃない。彼とはもっと違う話をす可きなのに。

「あの……!」
「ドロワーズやドレスは準備して有るよ。先迄コッペリアが居たのは君の部屋だ。クローゼットには下着、ドレスの他にも靴、アクセサリー等が有る。化粧水、乳液、化粧類も完備して有るから自由に使いなさい。欲しい物が有れば直ぐに用意しよう。申し出なさい。」
私の発した声は彼に因って掻き消された。

道楽や酔狂にしては手が込み過ぎている。本当に、私を囲う積もり――?

「今日は私が下着やドレスを取って来るから先に風呂に入ってなさい。此方だ。」