コッペリアの仮面 -琺瑯質の目をもつ乙女-


「――美味しい……。」

多種多様なの野菜が駆使されているのにも拘わらず素材一つ一つが主張し合っていない。
詰まり、しつこくないのだ。さっぱりとした、正に絶妙な味わいが口腔内で素晴らしいハーモニィを奏でている。

自然と匙を持つ腕が動く。
今の気候には若干冷たいが。ガスパチョは夏の暑いアンダルシア地方に適した栄養豊かなスープだと聞いた事が有る。

「其れは良かった。」

彼が言った事にも碌に返事もせずあっと言う間に私はスープを平らげた。然してパエーリャに食指を伸ばす。

此れも同様に直ぐに食べ終えた。莎夫藍(サフラン)の風味が見事に帆立貝や海老、烏賊と調和していた。

「コッペリア。葡萄酒は如何だい。ボルドー産の貴腐ワインだから甘くて美味だよ。最高級の物だ。」
彼がワイングラスに白い葡萄酒をなみなみと注ぎ乍ら言った。

「じゃあ……戴きます。」
私はワイングラスに手を伸ばし、少量口に含む。赤黒いモノを想像していた私は白葡萄の果樹園を思い浮かべた。

――甘い。
如何やら、私の口に合う様だ。私は盃を飲み干した。
初めて呑んだけれども、酒にも強いみたい。私はナプキンで唇の端を拭った。