沢山の人々で賑わう夜の繁華街で、道行く人達の視線を集める。



だけど、あたしはそれに気付かない程に夢中で走った。



真っ赤なドレスだけを身にまとったまま。






「あっ!」


「ごめん!」


15cmヒールはあたしの右足から離れ、振り返ってそれに気付いた直輝の足は、あたしのヒールへと向かった。



「はい。」


「ありがとう」



直輝はあたしの右足に、取ってきたヒールを履かせてくれた。



まるでシンデレラのように






「寒いよね。」


夢中で走っていたせいなのか、あたしの心の温度のせいなのか、それはわからなかったけれど……

肌寒い夜風の冷たさを、あたしは少しも感じてはいなかった。


「ごめんね。」

そう言って直輝があたしの肩にそっとかけてくれたジャケットには、まだ直輝の温もりが残っていた。




あたしは左手でジャケットの襟を掴み


「ありがとう。」


「行こうか。」


右手は差し出された直輝の左手と重なった。