コンコン

「俺だけど…」



「じゃっ!麻奈そろそろ帰るね♪」



「ちょっと麻奈!」



「ごゆっくり~♪」



麻奈が病室を出ると直輝は、今まで麻奈が座っていたパイプ椅子に腰をかけ



「さっき下で麻奈ちゃんに会って、まだいるって聞いたから」


目を伏せながら言った。



「だからってこなくていいのに。」



「俺嫌われてんな~!そりゃそうか……」


直輝は一瞬苦笑いをして、またすぐに目を伏せた


「…………」



「昨日の事だけど…」



「何?あっ、助けてもらったのにお礼まだだったね…」



「そうじゃなくて!!」



「大丈夫!!覚えてないから!!」



「……………」



覚えてない


覚えてないから……


気にしないでよ


わかってるから………





「俺………俺………くそっ!!」



直輝は顔を思い切り歪めながら自分の太ももを力いっぱい殴った






「どうしたの?」




「………ッ…何でもない…明日また来るわ」




「えっ…?」



直輝は顔を少し歪めたまますぐに病室を出て行った。