「言ってくれればよかったのに…」


!?


「言ってどうなるの?……言ってたら治った!?」



「………結華……一人で辛い想いしてたんだな……」



「…………」



「ごめんな……ごめんな俺――」

「どうしてここにいたの?」


瞳を潤ませる直輝の言葉を遮るようにあたしは問いかけた。

本当はどうだっていい

直輝がどこに居ようと関係ない




「…………」



「具合…悪いの?」



「……知り合いが入院してて」



「そうなんだ…」



「結華……俺……結華が――」

「ありがとう!もう大丈夫だから!帰ってい……ッ」



その後に続く言葉を聞きたくなくて

また心が揺らいでしまわないように

突き放したのに



「結華!!」


一瞬で直輝に抱きしめられた


「結華……愛してる……」


直輝の震える声

直輝の体温

直輝の匂い



その全てが……



思い出させる……



直輝と過ごした日々を



感じていた直輝の愛を



あたしの想いを





あたしを抱き締めるその腕を………その愛の言葉を………



真実だって……………



思ってしまいそうだよ……






でも







違う






「やめて!!」



あたしは直輝を突き放した



これでいい



全部嘘なんだから






でも……




直輝の目から零れた一筋の涙に


どうしようもないくらいに胸が締め付けられた