一也くんを呼んださっきの男が夜咲直の肩を叩いた。



もう行くんだ。
よかった。



あんまり近付くと、また騙されてしまいそうになるから。





「お願い!ラストまでいて!!終わったら飯でも行かない?」


突然の夜咲直の言葉に動揺した。


「え…帰るよ…今日お金持ってないし…」



あたしは初めて来た客。

きっとまた来させる為。

あたしはそんなのに引っ掛からないから。



「全部俺が出すから!いくらでも飲んでていいよ!」


「いや、でも…」


そこまでして指名が欲しいの?
ホストって大変なんだな。



「え〜!!いいの〜!?直の奢りだって〜♪終わったらみんなでカラオケ行こ〜!
優夜も行くよねっ?ねっ♪」


戸惑うあたしをよそに、満面の笑みを浮かべる麻奈。



「じゃあ麻奈ちゃんよろしく!
結華ちゃん…待っててね」



ちゃんと断れば良かったな……




でも心の片隅で
"もう少し話したい"と思っていたから、きちんと断る事が出来なかったのかもしれない。