「返却ってどうすればいいんですか」

頭の上から声がしたので、顔をあげると男の人が立っていた。

「あ、そのカゴに本だけ入れてもらえれば大丈夫です」

そう言って私はすぐ自分の仕事に戻った…。が、また頭の上からあの、と声がした。

「はいっ」

「今日も借りたいんですけど…カードって…」

「あ…クラスと名前を…言ってください」

「3年3組。木下楓です」

耳から入った情報通りに後ろから個人カードを取って渡す。

「ありがとう」

木下楓という人は笑ってカウンターから離れていった。