最近、自分の存在が歪んでいくのを感じる。いやっ、歪んでいくというよりは薄れていく…空気に溶けていってしまうような。
 もしも洗剤が海に流れ込んだとしたら、それを中和するには膨大な水が必要だと聞いたことがある。この社会は僕という存在を中和させてしまうには充分に膨大だ。
 などと無意味で無価値に思える事を考えてしまっている。いつもの事だ。
 最近は風邪で大学を休みがちになり、家にこもっているせいだろう。また大学の研究やバイトに追われれば何も考えなくて済む。
 こんなどうでもいい事。考えてカロリーを使ってしまうこと自体勿体ない。
 携帯を開いてみる。そういえば彼女と最近連絡をとっていない。付き合ってもう二年になるが、倦怠期などではない。別に連絡をとりあっていなくてもお互いに平気だからだ。それは信頼しあえているからだと友人は機械的な笑みをうかべながら、まるで講義中に自分の得意分野を説明する教授のように僕に言う。
 僕から言わせてもらえば周りのみんなが恋人や友人と連絡をとりすぎだと思ったりする。まるで連絡を取り合うことでお互いの存在を確認しあう様に。空気に溶けてしまうことを怖れるように。