笑うピエロ店員。

ぼくは痛みに目を瞑った。
感触で分かる。
お兄ちゃんがガラスを拭くようにぼくの心を擦ると、手を慎重に離していく。

すると、ぼくの中の膜(まく)のような何かが、お兄ちゃんの手に連れらるように、小さな穴から抜け出ようとしていた。

ぼくの中から、ずるずる、ずるずる、卵白のように引き出される。

体を伝っていく、何ともいえない気持ちの悪い感覚に、ぼくは眉を曲げる。

最後は、つっかえていたものが一気に抜け出たようになった。

腕が解放された。

目を開ける。
お兄ちゃんと、枯れ果てた商店街が視界にはいった。

だけど、なんだか、地に足がついていないような、体が空気に揺られていた。

空洞になったように軽い。

風船の気持ちが分かった。

何とも気持ちの悪い。
だけど、いずれ慣れていくのだろう、そうも思った。