笑うピエロ店員。

「さて、じゃあ早速明日をいただこうか」

そう言って、お兄ちゃんは壁から背中を離す。

お兄ちゃんが笑顔を向けると、ビビりのぼくの手は汗ばんだし、心臓も五kmを全力疾走した後みたいだった。

だけど、わくわくもしていた。

これから起こる、立ち入ったことのない世界。

どんなことが起こるんだろう、という期待感と、善からぬことが起きるんじゃないか、というドキドキ感。

ぼくはこの二つに、心踊らせていたんだ。


お兄ちゃんの笑顔がゆっくり消えたかと思うと、それに反比例して、虎が獲物を捉えるようにぼくの腕が掴まれる。

強い力で引き寄せられた。
ぼくの情けない声が漏れる。

引っ張る勢いを利用して、お兄ちゃんはもう片方の手を、ぼくの左胸にあてがった。

心臓と、心の部分だ──。