「な。戻ったろ」
お兄ちゃんが人懐っこそうに白いはを覗かせた。

ぼくは、うんと答えたが、完璧にもとどうりという訳ではなかった。

空いた穴に、空気を詰めている。そんな感じだった。

「それにしても、大きいね。君の明日」

ハッと目を見開く。
お兄ちゃんが持っているものに、今気づいた。

ビーチボールに水が入っているような、シリコン状の丸いものを、お兄ちゃんは片手で顔の横に持ち上げている。

「それが、ぼくの明日?」
「うん。そうだよ」
そう言うとお兄ちゃんは、それをバスケットボールのように回した。

人差し指の上で、上手いことバランスを取っている。

「ほら、こんなに感情色が入ってる。しかも暖色系が多い」

初めて水族館に来た子供のように、ボールを見つめるお兄ちゃん。

言っていることが分からなかったが、取り敢えずうなずいておいた。


「そうそう、代替品だね。何がお望みかな」

そう言われて、あの柔らかそうなスポンジ生地を思い出した。

「じゃあ、千五百六十円」

ケーキの値段ぴったりだ。