その日は、社長の家に泊まった。

空まで続いているような大きなマンションの8階に住んでいた。

夜になると、屋上が光輝く。

ドアを開け部屋の中に入ると、そこは別世界のように思えた。

白で統一された部屋には、あまり生活感がなかった。

「私は事務所で寝泊りすることが多いから、ここは好きなように使ってくれていいわ。

食事はお手伝いさんが作ってくれるから、安心して。」

落ち着かないのか、キョロキョロしているアリナを見て社長は微笑んだ。

「あなた、ちゃんと14歳ね。」

アリナは訳が分からず、首を傾けた。

「はい、これ。」

社長が手渡したのは、雑誌[Queen]だった。

「アリナが生きていく世界よ。」

アリナは雑誌に視線を落とした。

黒く日焼けしたモデルが笑いかけていた。

何冊もある雑誌の重みが、アリナに生きていると言う事を感じさせた。