アリナ、14歳。

家にある、すべてのお金をアリナは持ち出した。

と、いっても汗ばむ手で握っている
金額は3万円。

それでもアリナにとっては、大金だった。

いや、アイツらにとっては・・・。

今頃、全財産が無くなっていることに気づいて、腹を立てているだろう。

アリナは薬局に行き、
マスカラ、
口紅、
ファンデーション・・
必要な化粧品を買った。

『次は服・・・』

店内に入ると
賑やかな音楽が、アリナの心を少しワクワクさせた。

アリナの目を捉えたのは、真っ赤なレースのついた、キャミソール型のワンピ。

大きな花のついたミュールも買った。

「ありがとうございました。」

店員の声を背で聞いて、そのままトイレに向かった。

そこで初めての化粧をした。

慣れない手つきでも、少しづつ変わっていく
自分に驚いた。

黒目は、さらに大きくなり、睫毛は人形のように長く伸びた。


化粧が終わると、今着ている服を脱ぎ捨てて、
買ったばかりの
ワンピを着た。

靴も捨てた。

白い肌に、赤がよく映える。

すらりと細い長い足が、覗く。

背が高い分、大胆過ぎるぐらいのミニのワンピになった。

アリナは外へ出た。

世界がまた違って見えた。

ミュールが履き慣れず、
ぎこちない歩き方だったが、
慣れてくると自然に歩けるようになった。

「あの人、モデル?」

そんな声があちこちから聞こえてくる。