アミューズメントタワーでの事件の責任の追及に耐え切れず、自ら命を絶ってしまった朝霧の父親。

その実の父親の死に様を目の当たりにしてしまった朝霧。

彼女は元々、精神的に強い方ではなかった。

そんな彼女が肉親の死に直面してしまったのだ。

その精神的なショックは、俺の想像を遥かに上回るものだったのだろう。

感情を、言葉を失い、心まで閉ざしてしまうほどに。

朝霧もまた、あの事件の被害者。

そして、八戸によって人生を狂わされてしまった張本人。

そう思うと歯噛みせずにはいられない。

硬く硬く、拳を握り締める。

と。

「…ながせ…くん…」

視線は天井のまま。

表情は変わらないまま。

それでも、確かに小さく、朝霧は俺の名前を呼んだ。