潜入任務とは、如何に痕跡を残さないかの勝負でもある。

足跡、衣擦れや足音といった音、毛髪や血痕、汗、体臭や銃を撃った際の薬莢、指紋に至るまで。

侵入者は存在しない空気として行動しなければならない。

そして迎え撃つ者は、その僅かな変化を見逃す事なく細心の注意を払う。

いわば命を懸けたかくれんぼだ。

そんな精神を極限まですり減らす、割に合わないかくれんぼを続けながら、俺は目的の場所に到達した。

ナースステーション。

ここになら、入院している患者の全ての情報があると踏んだのだ。