もっと陽の当たる場所へ


どうすればいいのかわからなかった。

動けなくなった私は、雛を手に抱えたままその場に立ち尽くしてしまう。

せめて降り出した雨に濡れないようにと、雛を胸元に当てた……。



……何時の間にか、雛は鳴き声を上げなくなっていた。


動かなくなった。

微かな震えすらなくなり、手の中でどんどん温度が下がっていく。

それを肌で感じた時、私は気付いた。雛は死んでしまったのだと……。


私が殺してしまったのだ。



「…まだ居たのか」

老人の声がした。
それは相変わらず冷たい声だったけれど、不思議と怖い気はしなかった。

私の手の中にある死骸を見て、老人は目を細めた。



「死んだのか…」

その言葉に頷いて答えると、老人は小さく息を吐く。

…そして、


「…ついて来い」


それだけ言って老人は庭の方へ歩いて行った。言われるままに私は老人のあとを追った。

庭の隅の方まで行き、老人は足を止める。そこには小さな穴があった。


「埋めてやれ。

お前が最後まで面倒見てやるんだ」


言いながら老人は、雛を抱えた私の手の上にハンカチを被せた。皺だらけの指の先は少し土で汚れている。

雛のために穴を掘ってくれたのだろうか……。
私は頭の隅でそんなことを考えながら、黙って老人の言葉に従った。


被せられたハンカチで雛を包み、それを土の中に埋めた。

この時の、雨に濡れた土の匂いを私は一生忘れることは出来ないだろう……。



「手、洗っていけ」

老人は無愛想に言い、私を家に上げてくれた。

庭の縁側から家に入る。
雨でぐっしょりと濡れた服と身体の雫がポタポタと廊下に零れ落ちた。

老人は迷惑そうな顔をしたが、なにも言わなかった……。


台所の流しで手を洗わせてもらう。

蛇口から勢いよく水が溢れ出て、手に付いた土はシンクにどんどん流れていく。


それをぼんやりと眺めているうちに、涙がぽたっと零れ落ちた……。