「いい加減にしろ」
――ばちんっ
そんな音が部屋に響いた。
酔っていた私の意識が、一気に引き戻される。
「痛ぁ…
殴らなくてもいいじゃん」
「…………」
ひっぱたかれた頬を手で押さえながらて文句を言ってみても、壱さんは私のことなど気にもしていない。
「今どき体罰なんて流行ってないんだからね」
「口で言ってもきかねぇ奴が悪い」
壱さんらしいシンプルな言葉に、思わず笑みが零れた。
すると、
――ばちんっ
壱さんが私をもう一度ぶった。今度は反対側の頬がじんと痺れた……。
「だから殴らなくても…」
もう一度文句を言おうとしたところで、壱さんはそれを遮った。
「…蚊」
そう言って自分の手のひらを見せた。手のひらには、潰れた蚊と血がべっとりと付いていた。
無意識に自分の頬に触れた。じんと痺れる肌のなかに、ぷくりと膨れるものができていた。
「ありがと…」

