しばらく、拓馬はその場から動けなかった。


恐怖が全身を包み、足が鉛のように重かった。


頼みの綱は、警察。もう、それしかない。


警察がルイに勝てるかわからないが、どんな兵器をもってしても勝てなかったら……そのときは……世界の終わりだろう。


戦争が始まる気がする。世界対、ゲーム。


拓馬はゆっくりと足を動かすと、再び警察署へ向かう為、一歩踏み出した。そのときだった。


ガシャ、ガシャ……


「あ……」


音がする。それも、一つじゃない。後ろから。前から。右から。左から。十数の音。


遅かった……すでに、囲まれた。


全ての音が、拓馬に向かっている。


「おい、勘弁しろよ……」


前回と難易度が違いすぎる。今度は、たった一体のモンスターも倒せない。戦えば、殺されるのは目に見えている。


どっちに進んでも、一体以上のボーンを正面からやり過ごさなければならない。


もはや、無傷では済まされない。


無意識にキョロキョロと辺りを見る拓馬。


進めない。どこにも、逃げれない……でも、どこかへ走り出したい。


「くそっ!どうすんだよ!」


だんだん音が近づいてくる。


その度に、拓馬の全身の痙攣が大きくなってくる。


「うぅ……」


わけがわからず、泣き出してしまう拓馬。


「いないのかよ……今回……スケットは……竜太のような、スケットは……」


泣きながらすがるように呟く拓馬。


そのとき、右から声がした。