本能的に、拓馬は近くの木の陰に隠れた。


寒気が全身を襲う。


心臓が、高鳴る。


1分程経った頃、それは現れた。


ドクン。


その姿と同時に、拓馬の胸が痛いほど鳴った。


ルイだ。ルイが、いる。


ボーン、ボーンナイト、ソルジャーをも凌駕する存在。通称、アークデーモン。


奴に出会ったら最後、逃げることもできないだろう。


「うぁ……うああ……」


拓馬から悲鳴が漏れる。


暗殺者に追われるというのは、これほどまでに恐怖を覚えるのか。


吐き気が止まらない。耳鳴りがする。上手く息ができない。酸素がなくなっているかのようだ。


ルイは血相を変えて、何かを探しているようだ。


おそらく、拓馬を探しているのだろう。


「殺される……殺される……」


ガタガタと震えながら、お経のように呟く拓馬。


頼む……気づくな……気づくな……!


祈りが通じたのか、ルイは拓馬に気づかずに去っていった。


去ったあとも、安心できなかった。


ルイが、こっちの世界にいる。それだけで、死を覚悟するしかなかった。


おそらく、二章はこういうことだろう。


ルイが生きていた。つまり、またルイを倒すと、クリア。


しかし、今度は簡単にはいかない。ゲームの中と違って、大魔法の剣がない。


武器無しであんな化け物と、どうやって戦えって言うんだよ……