「くそっ!」


苛立ちながらポケットにしまう拓馬。


おそらく、何かされている。こんな住宅街の公園が、圏外のはずがない。


第一、この公園には、前に彼女と遊びに来たことがある。そのときは、もちろん電波はあった。


呼吸が整うと、拓馬は立ち上がった。


こうしている間にも、ボーンは探しているだろう。見つかってしまうと、終わりだ。今は、防具も何もない。そんな中、剣で切られたりしたら、ひとたまりもない。


ぐずぐずしていられない。拓馬は、公園を出て警察署を目指した。


なるべく人通りの多そうな道を選んで、歩いた。


しかし10分程歩いても、一人も通行人はいなかった。


「うぅ……」


トボトボと歩いていると、なんだか泣けてくる拓馬。


これも、多分何かされている……人っ子一人いないなんて、どう考えてもおかしい。ここは、住宅街。マンションが立ち並び、人工的な自然がそれを取り巻いている。いつもこの時間は、買い物帰りの主婦や、帰宅中のサラリーマンをよく見かける。


「!」


そんなことを考えていると、前方にすさまじい気配がする。


嫌な予感。思わず、立ち止まる拓馬。


「何だ……」


特に、何も見えない。だが、何かがこちらに向かってきているような気がする。


全身に震えを感じる。ここにいては、確実に死ぬ。


「何なんだよ、一体……」