間一髪でそれをかわすと、拓馬は包丁でボーンのろっ骨を砕いた。その衝撃に、バランスを崩すボーン。


「ああああ!」


拓馬はその隙に、靴も履かずに勢い良く外へ飛び出した。


廊下を全力疾走し、階段を駆け下りる。


「何なんだ……何なんだよ!」


一階へ降りると、マンションの外へ出た。


「誰か!誰か!」


声にならない声で叫びながら、全力疾走する拓馬。


後ろを振り返ると、ボーンが追ってきている。速い。拓馬と同じくらいの速度だ。


「うわぁああ!」


包丁を片手に、必死に走る拓馬。


不幸なことに、通行人が一人もいない。車も走っていない。


「ハァ、ハァ」


走りながら、拓馬は携帯電話を取り出し、110を押した。


しかし、携帯電話の液晶には文字が表示されていた。


『圏外です』


ふざけるな……ふざけるな!


圏外のはずがない。いつもは、どこへ行ったって電波はマックスだった。


拓馬は公園に入ると、大きな滑り台の下に座って身を潜めた。


「フー、フー……」


荒れた呼吸を整えようとする拓馬。まだまだ逃げたかったが、もう息が続かない。


「……」


とりあえず、ボーンの足音はない。それにしても、何でアイツがここに居るんだ……ゲームの中のモンスターだ。


これから、どうしよう。警察署へ行くには、ここから歩いて1時間近くかかる。


再び携帯電話を取り出す拓馬。やはり、圏外。