現実RPG2

「じゃ、クロな。これからよろしくな、クロ……」


笑顔で言った、そのときだった。


「あ……」


前方に、人影が見える。


いや……人ではない。モンスターだ。目が赤く光っているのがわかる。


距離は、50メートル程先。


気づかれているが、走って逃げるか……


だんだん近づいてくる。


全身包帯の、ミイラ男だ。剣は持っていないが、ゴツイ。まるで格闘技の選手だ。身長は、2メートル近くあるだろう。


多分、魔法はもう撃てないだろう。1章のとき、ルイが言っていた。魔法は、撃つと充電しなければならない。つまり、もう切り札がない。


戦うわけにはいかない……


「逃げるぞ、クロ!」


慌ててクロをだっこすると、拓馬は走りだした。


しかし、ミイラ男は速かった。30メートル程走ったところで、追いつかれてしまった。


拓馬の背中に、衝撃が走る。


「ぐっ!」


その衝撃に、倒れてゲホゲホと咳き込む拓馬。


おそらく、蹴られたか、殴られた。


倒れる瞬間にクロをかばったせいで、左腕を思い切り擦り剥いた。


「痛ぇ……」


ゆっくりと立ち上がると、拓馬はクロをそっと地面に置いてから拳を構えた。


「くそっ……」


逃げれないなら、戦うしかない。


勝てる見込みはかなり薄いが、やらなければ、死ぬだけだ。