現実RPG2

拓馬は立ち上がると、犬に「バイバイ」と笑顔で手を振った。


歩き出す拓馬。とりあえず、適当に進むしかない。


「はぁあ」


思わずタメ息が出る。


適当に進むと言っても、1章のときのように、ゲームの世界ではない。ここは、日本。広い。どうするか……


そのとき、拓馬の背後からトコトコと足音がする。


誰かに、後をつけられている……


心臓が鳴る拓馬。


敵か……!


ゆっくり振り返る拓馬。


するとそこには、さっきの犬が居た。拓馬の後をついてきている。


「あれ?お前……ついてくるなよ。危ねぇぞ。シッ、シッ」


追い払うようなジェスチャーをしてみせる拓馬。


しかし、犬は「クーン」と悲しそうな声を上げただけで、拓馬を追うことをやめなかった。


「おい、ホントに危ねぇって。モンスターがいるんだぞ」


それでも、俯きながらついてくる犬。


拓馬はしぶしぶ、しゃがんで手を差し伸べた。


「しょうがねぇなぁ。ほら、おいで」


すると犬は嬉しそうに、しっぽを振って拓馬の手に飛びついた。


「アハハ。まさか、お前がスケットじゃねぇよな?」


笑顔で聞く拓馬。当然返事はないが、嬉しそうな犬を見ていると、少し心が和んだ。


「じゃ、一緒に行こうか」


拓馬は犬をだっこすると、再び歩き出した。


何か、久しぶりに生きものと一緒な気がする。夕方までは大学に行って、たくさんの人に囲まれていたのに……ずっと一人っきりだった気分だ。


例え犬でも、何か落ち着く。