現実RPG2

未だ人影は見えない。完全におかしい。


そのとき思う、一つの事。もしかしたら、もうどこかゲームの世界へ飛ばされているのかもしれない。現実の世界そっくりな、ゲームの世界に。


もしそうなら、警察署なんて行っても警官がいないだろう。


でも、そうなれば逆に希望もある。もしここがゲームの世界なら、どこかに武器屋があるかもしれない。そこで武器を買えば強くなるし、そうなれば戦うことも出来る。


しかし、その考えは一瞬のうちに解決した。


トイレに行きたくなってきたのだ。確かゲームの中なら、お腹も空かないし、トイレにも行きたくならなかった。


つまり、ここはやっぱり現実世界。武器を持ったところで強くなれない残念な気持ちと同時に、警察がいるという喜びの気持ちも湧き上がり、複雑な気持ちになった。


拓馬は公衆便所で用を足すと、再びトボトボと警察署へ向かって歩いた。


もうどのくらい歩いただろうか。多分、30分は歩いている。


その時間経過と疲労のせいか、緊張の糸が緩くなってきた。


辺りもだいぶ暗くなり、視界が悪くなってきた。


そのとき、前方に犬が一匹、拓馬の前を横切った。


「お、犬?」


警戒する拓馬。ヤバイ。モンスターかもしれない。


毛色は黒の、チワワのようだ。この大きさなら、モンスターでも勝てるか……いや、子猫のように、怪力のはずだ。ダメだ……


しかし、犬は拓馬に目もくれず、通り過ぎて行った。どうやら、普通の犬だったようだ。


「なんだよ、犬はいるのか?」


人はいないのに、犬はいる。どうなってんだ……


その矢先だった。犬のせいで、完全に油断していた。