危なかった。竜太を完全に良い人だと決めつけるのはよくない。


良い人過ぎるのが、逆に助かった。気づけた。


警戒しなければ。すでに、ゲームは始まってる。


この状況で心から信じようとするなんて、何をやってるんだ、俺は……!


キョロキョロと家中を見る拓馬。


まだ、竜太が敵だと決まったわけではない。


何か、敵か味方かの判断材料が欲しい。


「!」


あった。


何で、こんなことにも気づかないんだ。


人に縋ると言うのは、これほどまでに恐ろしいのか。


一度信じると、周りが見えなくなり、その人だけを頼ってしまう。


「警察、遅いな」


伸びをしながら、微笑んで呟く竜太。


あたり前だ。だって……


その電話、ケーブルが繋がっていないのだから。


ワイヤレスの家電話なんか、あるかバカヤロー。


これが決定的な証拠。竜太は、敵。警察に電話を掛けたフリをした。


こんなことすら見抜けなかったのか、俺は。


いや、ギリギリ見抜いた。まだ、竜太は拓馬を騙せているつもりでいる。ここは、調子を合わせてやろう。


どうするつもりか知らないが、罠に嵌まっている芝居をして、隙を見つけて相手を討つ。


そうでもしないと、この竜太がボーン以上の強さなら、倒すことはできない。


「どうしたんだ、拓馬君?」


おっと、考え込むのはここまでだ。


これ以上思い詰めた表情をしてしまうと、罠がバレていることに気づかれる。