ロシアンルーレット【コミカルアクション】

 しばし硬直し、微動だにせず俺を見詰めていた兄貴は、突然緊張の糸がプツリと切れたように、フッと軽く噴出した。


 そして、失踪する以前の、俺を励まし支えてくれた頃の、あの温かい笑みを見せた。


「理沙…お前が残れ。皆人を連れて行く。」


 そう静かに言うと、クルリと身体を半回転させ歩き出した。


 女は身につけていた重装備を、しぶしぶ一つ一つ外して俺に渡した。


「『一人で待つ』!?あんたにはノアちゃんがいるじゃない。」


 ブツブツ聞こえよがしに文句を言い、最後に防弾チョッキを俺の胸に押し付けるように乱暴に渡し、


「ノアちゃん泣かせたら、許さないから。」


 俺を睨みつけて言った。


「わかってる。」


 ボソリと答えて踵を返し、俺は兄貴の後を追った。