ロシアンルーレット【コミカルアクション】

「俺が兄貴に掛け合う。」


 そう言って、女の腕を開放し、女の先を行く。


「待ってよ!私が龍に殺されるわ!」


 叫びながら追いかけてくる女を無視して建物を出た。


 廃墟前のだだっ広い敷地では、バカデカい漆黒の4WDやワゴン車に武装した男達が順に乗り込んでいる。


 その様子を、全体を見渡せる位置に立ち、静かに眺めている兄貴がいた。


 夜風にさらされ、ふわりと薄茶の髪が揺れている。


 着替えを済ませたらしく、兄貴は全身真っ黒な衣服に身を包み、その鋭い眼差しといい、まるで黒豹のようだ。


 いや、荒野に佇む武将というべきか。


 日本人離れした堀の深い顔ではあるが…。