1102号室のドアの前に立ち、俺はインターフォンを押した。 そしてそのモニターに、わざと俺の姿が映るように立った。 束の間の沈黙の後、 「今開ける。」 と、最近では聞き慣れてしまったあの声が一言、インターフォン越しに告げた。 間もなくして、開錠の音がやたら響き、ゆっくりドアが開け放たれた。 「よくここがわかったな。」 兄貴は困惑も、動揺すら見せず、不適な笑みを浮かべてそう言った。