私はギュッと颯矢の服を掴む。 「颯矢、やだよ…」 お願いだから、どこにも行かないで。 ずっと…そばにいてよ。 「………」 不安な私に颯矢は何かを言うわけでもなく、ただ黙って抱きしめる。 そして…私は知ってしまった。 少しだけ、颯矢の抱きしめる手が震えてることを。 「…ぃよ」 「え?」 蚊の泣くような声で聞き取れなかった颯矢の声。 「…悔しいよ」 声が…少しいつもと違った。 「俺は…くそっ」 颯矢は…悔しそうに地面に拳をぶつけた。