…例えば、お婆ちゃんがいなくなったとき。
偶然、私はお婆ちゃんの苦しむ姿を見た。
突然の心臓発作だった。
いきなり倒れたおばあちゃんの苦しむ顔。
お母さんの叫び声。
電話をかけるお父さんの焦りよう。
…全て、今も鮮明に思い出す。
思い出す、というか、勝手に浮かんでくる。
どれだけ頭を真っ白にしても。
お婆ちゃんを忘れたいわけではないけれど、やっぱり思い出すのは辛いんだ。
「…みんな、何にも分かってないんだよ」
そう、みんな羨ましいとしか思っていないだろう。
この忘れられない辛さを…知るわけがない。
「そうかもな。周りの人間には、分からない。だから…お前の辛さを消すことは俺には出来ない」
眉毛を下げて言う颯矢からは、沢山の愛が伝わる。
私のことをどれだけ思ってくれているのかが。
そんな顔、しないで…。
「だけど…」
颯矢はそう言って少し体を離した。

