恋愛日和―愛してるの意味-

そして、私は一人ソメイヨシノの下に居た。
……不思議と、心は穏やかだった。
来るか、来ないか…もちろん、私には解らない。
音信不通になった3年前から、彼の所在は不明だ。
日本に帰ってきてるかさえ、保証も無い。
――どっちにしても、自分自身で終わらせたはずだった恋が、
……ずっと、燻ってたのだ。
けじめをつける意味では、必要なことかもしれない。
この約束の日を迎えるのは…。


――彼は、来ない。
でも、もし――、もし…彼が着てくれたら、私は…多分ッ。


「―――――、だよな。」

「…え?…っ。」


懐かしい声、振り返ったそこにあったのは――。

「…嘘…。夢、――じゃ、ないよね。」
「あ…あぁ。」

彼が、いた。出会った時と同じ、ソメイヨシノの花弁が舞い散る中に――。
フラッシュバックのように、
私の中の時間が急速に退化していくのを感じた。
彼の、優しい瞳が大好きだった。
彼の、低くて落ち着いた声が大好きだった。
彼の、暖かい手の温もりが大好きだった。
そんな事を1つ、1つ、指折りしながら思い出してみては…
苦笑を浮かべてたここ2年の自分が
無かったことのように私の中から消えてゆく気がする。

――が、――流れ去った時は、二度と戻らない。
あの頃と、たった一つだけ変わった…彼の左手。

「……もしかして、結婚――、したの??」
「―――あぁ。去年の12月に、向こうの学校で一緒だった子と。」
「――去年、…。そう、だよね。
 ……私達、もう…終わってたんだよね。」


改めて口に出してみると、過酷な現実。
泳いでしまう瞳は、彼を真っ直ぐに見つめることが出来ず
…右手でソメイヨシノの樹木を握り締める。
そんな私の様子に、彼も困惑した表情で言葉を紡ぎ出した。