恋愛日和―愛してるの意味-

――職場恋愛の基本として、その関係を公には出来ない。
昔からの暗黙のルールなのか、私達は自然にそれを守っていた。
ゆえに、同期入社の一番仲のいい親友ですら
私と彼の関係は知らない。

【部長にプレゼンの案について駄目だしを食らったから、
 同じプロジェクトメンバーの彼に相談したいんだけど、
 ――まだ、いる??】
――何も知らない友人は、微塵も疑う様子もなく
真実をさらっと述べてくれた。
彼女居たんだね、と笑みまで零す彼女に
意外だねと相槌をうち、私は電話を切った。


そして、その足で駅前一丁目のバス停で彼を待つ。
あのレストランへ行くには、この道を避けては通れない。
レンガで出来た街道の上に並ぶモミの木は
美しくライトアップされ
多くの恋人たちが、仲睦まじく寄り添って歩いていた。

――その時だった。

……ふっと、胸に切ない痛みが走ったのは…。


私達も、昔は彼等のように幸せに包まれ
当然のように訪れるあろう二人の歩むべき未来を夢見ていた。
この街道だって……何度も歩いた。
初めて歩いたのは、付き合い始めて2週間くらい経った日。
確か、今と同じようにクリスマスイブ直前で
二人で楽しそうにイブの計画を立てながら
繋いだ手の温もりが心地よくて、愛おしくて―――、
笑みが絶えなかった。
イブ当日は、北海道旅行を決行。
夜景の綺麗なホテルのスウィートで………初めて、体を重ねた。
処女でもないのに、死ぬほど恥ずかしくて緊張して…
涙が出るくらい嬉しかったのを
今でもはっきりと覚えてる。