「あら、キディ、今日も可愛いわね」
「本当、中学生から何も変わってないんじゃないのか」

ぴくり、と肩が揺れる。
小さく握りこぶしを作ってその声の人物をみやった。

「お久しぶりです、ではさようなら」

頬の筋肉がやけに強張った気がする。
踵を返して歩き出せば、肉屋の彼等は首を傾げた。
いや、多分そんなに気にしてない。

「中学生から変わってない、って、失礼しちゃう」

そう呟きながら少し早歩きになる。
幼い頃からいたこの街を、私は離れることにした。
少しぐらい未練があってもいいんだが。

まったくない。

子供の頃の私を知る人から離れたかった。
家族である両親は相変わらず無頓着だし、姉はエリート人生を全うしている。
勉強も運動も出来ない私とは大違いだ。


……それに、私はまだ成人していなかった。